昨今のクマによる事故の多発を受けて、クマスプレーに関する様々な話題が報道やSNS上で飛び交っております。また、ネット上では多くの種類のスプレーがクマ用と謳って販売されています。やり取りされている情報の中には必ずしも正しくないものがあります。また、効果が怪しい製品も販売されています。
この度、ヒグマの会会員の伊藤かおりさから、ご友人(ハンドル名「ふらいびと」さん)が、複数の製品を実際に比較検証した動画をYou Tubeにアップされたという情報をいただきました。クマ対策用スプレーと称されている製品を実際に比べる機会はなかなかありませんので貴重な映像と考えます。
また、この映像は各製品を忖度なく比較しており、その手法も不適切ではないと思われますので、紹介します。
興味のある方は以下をご覧ください。
【ヒグマの会事務局】
この情報発信は、ヒグマの会として、特定の製品を推奨するものではありません。
この動画を見てのご判断は、各自の責任においてお願いします。
尚、ヒグマの会としては、以下のコメントを申し添えます。
1)日本に、クマスプレーの認証基準はありませんが、多数の実例検証や研究例があるアメリカ合衆国では、クマ類の専門家や管理機関で構成された省庁連携グリズリー委員会(IBGC: Interagency Grizzly Bear Committee)がガイドラインを公表しています。
Interagency Grizzly Bear Committee (IGBC) Bear Spray Guidelines (2017)
https://igbconline.org/be-bear-aware/bear-spray/
この中で、IGBCは、 EPA(米国環境保護庁)が認証した製品だけを使うことを強く推奨しています。EPAが認証した製品のラベルには写真のように認証番号が明記されています。まず第1に、EPA認証番号があるものを使いましょう。
EPAに認証された製品は以下のような特性があります。
・カプサイシンおよびそれに関連する辛味成分を通常2%程度含有している。
→ つまり十分な効果を持つ成分が入っていること。
・内容量が最低7.6オンス(215グラム)あること。
→ つまり、あまり少ない(小さいもの)は十分な噴射量や噴射時間を確保できない。
・最低7.5mスプレーが届くこと。
→ つまり、一定の距離を保って効果的に噴射できること。

2)動画の中では、スプレーをホルスターからとりだす速さの比較をしています。もちろん素早く取り出すことは必要ですが、行動中に落としてしまわないこと、誤射しないように安全装置がしっかりカバーされていることも大切です。慌てて取り出すより、落ち着いて状況をしっかり見ながら発射することも重要です。カプサイシンの噴霧の到達距離の比較が行われていますが、クマがあまり離れている時に発射すると、風の影響などにより効果的に届かない恐れがあります。また、クマは威嚇のために突進してくることも多く、その場合途中で引き返します。遠い距離でのムダ撃ちにならぬよう、4〜5mまで来た時点で、しっかりとクマの目や鼻を狙って噴射することをお薦めします。噴霧の「壁」を作ることも大切なので、水鉄砲状に噴射されるものは不適当です。
尚、動画は各製品の特性を比較したもので、実際のクマに対する撃退能力の優劣の比較実験を行ったものではありませんし、その実験を行うことは困難であることを申し添えます。